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現代中国考


現代中国に独自の観点から考察を加えます
by 4kokintou

日中外交の黒子

黒幕と言うべきか、振付師と称するべきか、兎に角、この人物がいないと日中外交は動きません。


元総理大臣、福田康夫氏です。


中国では3月22日からボアオ・フォーラムが開催されていますが(25日まで)、開幕前日の21日、福田元総理(同フォーラム理事長)は北京の長富宮飯店で梅葆玖氏(京劇の名優梅蘭芳の息子)と再開していました。

因みに長富宮飯店の正式名称は「ホテルニューオータニ長富宮」、密談するのには持って来いの場所です。

その翌日、元総理はボアオに移動していますが、基調演説は「団派の次期領袖」李克強首相、至れり尽くせりですが、今年は習近平国家主席が欠席の模様です。


2008年の胡錦濤国家主席(当時)来日の折、日中両政府は「日中戦略的互恵関係」に関する共同声明を、両首脳(胡主席並びに福田首相)の署名を付して明文化しました。

この両人の付き合いは長く、1978年の「日中平和条約」締結の際、水面下で窓口として擦り合わせ役を担った時期から続く交友関係です。

因みに両国の時の(実質的)首脳は、福田赳夫総理(康夫氏の父)と鄧小平(団派の後見人)です。

話を「戦略的互恵関係」に戻しますと、「戦略的」とは「私的」「非公式」と言う意味、「胡錦濤氏とその思想信条を共有する人間集団」と、「福田康夫とその周辺」との間の「私的非公式約定」であることを含んでいます。

そして「互恵」とは「台頭」「五分の関係」を示すものの、中国人がこの言葉を使う時は「実質的には中国の方が格下」の意です。

留意すべきは、来日の際に胡国家主席が中国側の窓口として指名したのが王岐山氏、あの党中央紀律検査委員会を統べる「鬼の政治局常務委員」です。(当時は政治局員で副首相)

参考までに、「米中戦略対話」を仕切るのも王岐山常務委員、その真意は「頭越しに交渉したら、承知しないぞ」と言うオバマ政権に対する威嚇と警告で、オバマ大統領本人以外の主要閣僚は正しく理解し、習近平(反胡錦濤派)国家主席と距離を置いています。

付言しますと、日中は「関係」、米中は「関係」を結ぶに至らず、そのための「対話」が必要な段階にあります。


「日中戦略的互恵関係」はその後、紆余曲折を辿ります。

まず足を引っ張られた福田康夫総理が退任、後任が引きずり降ろした張本人の麻生太郎氏、「戦略的」関係なんて理解出来る筈もないのですが、中国側は一縷の望みを抱いて王岐山氏を訪日させ麻生総理と会談させていますが、どれだけ理解して貰ったのやら。

政権交代で麻生氏も約1年で退陣、「悪夢の民主党政権の3年間」が始まるのですが、己のみが常に正しいと信じて疑わない愚物(絶対に取り消さない)、岡田克也外相(当時)が政治決着を以ってお蔵入りしていた筈の「毒入り冷凍餃子」の件を蒸し返して胡錦濤指導部を激怒させ、「首脳及び閣僚級交流の全面中断」を決断させるに至りました。

つまり「日中戦略的互恵関係」は棚上げの状態になりました。

安倍内閣が発足し自民系政権が復活し、安倍総理は福田元総理を介して連絡が取れるものの、今度は相手に横槍が入っている、具体的には習近平「反日反胡錦濤」国家主席が障害となっています。

でも徐々に緊張がほぐれつつあることは、習近平氏の権威失墜からも明らかです。

(続く)


# by 4kokintou | 2016-03-24 22:47

承前 ~習近平の命運~

前回は習近平国家主席が続投し、二期十年を全うすることを前提にお話ししましたが、最近の状況をみる限り、一期五年での勇退或いは任期途中での失脚も有り得るのではないか、その様な印象さえ抱かざるを得ません。


その場合、事情は根本的に異なります。


習国家主席が一期五年で退いたとすれば、政治局員から新たに6名を補充しなければなりませんが、習近平(貴州)・劉雲山(山西省、内蒙古自治区)・趙楽際(青海省)の「地域政治ボス連合」は一掃されますので、順番から言えば「団派の若大将」胡春華広東省党書記が昇格することになります。


任期を待たず引退したとしても、劉雲山と趙楽際は御用済み、改選期に「長老」に退きます。


但し、習国家主席の抜けた穴は、国家副主席の李源潮国家主席が暫定的に就任し、政治局常務委員に格上げされると共に、党総書記や軍事委員会主席も引き継ぐことになるでしょう。


次に、習近平主席夫人の彭麗媛人民解放軍陸軍少将の後ろ盾たる軍部も再編成され、出身母体の山東省を初め、山西省、遼寧省と言った地域の「軍閥」では、整風が実施されることが予想されます。

中国では軍閥の消長と党幹部の出入りは連動しますので、権力闘争の行方次第で軍部の顔触れも一変します。

あくまで私見ですが、今回の人民解放軍の再編成は、習主席の本意ではなかったのではないか、戦区を7から5に減らすと言うことは、それだけ上級職の椅子の数が無くなりますから、軍部に言わせればリストラ以外の何物でもありません。

そして憎まれ役は国家主席殿、踏んだり蹴ったりとはこのことではないでしょうか。

(続く)



# by 4kokintou | 2016-03-23 21:57

混迷と迷走と ~それから「次期中国首脳の顔触れ予想」~

昨年(2015年)はパリ(フランス)が舞台だった同時多発テロ、今年は北上してブリュッセル(ベルギー)に移りました。

この流れで行くと、次はその北隣のオランダ(アムステルダムかロッテルダム)、そして最終目的地のドイツ(ハンブルグ?)に飛び火することにもなりかねません。


ミャンマーの「指導者」スーチー女史、憲法の規定で大統領に就任出来ませんでしたが、外相、大統領府大臣(日本で言えば内閣官房長官)、教育大臣、更には電力エネルギー相を兼任、「お手並み拝見」と言うのが反対勢力の偽らざる心理でしょう。

女史の政治手腕は未知数です、ずっと在野ですから。

そうでなくとも、どれをとっても重要閣僚、本来ならば然るべき人物に割り振るべきですが、これだけ兼任すると言うことは、人材が払底していることの表れ、同時にこの政権の不安定さを物語っています。

政権崩壊の時期は意外と近いと読みます。


2012年11月、中国共産党中央委員会総書記に就任した習近平ですが、一期5年ですから2017年11月が改選期、但し政治局常務委員の定年は68歳ですから、習主席と李克強首相を除き、5名が退任せねばならず、計算上は1950年以降の生まれが新任の対象となります。

しかも、政治局委員から抜擢されるのが常ですが、制服組(軍人)はここ止まり、常務委員にならないのが慣例です。

まず、現職の常務委員7名とその役職を序列順に列挙しますと、

習近平:国家主席、国家央軍事委員会主席、党総書記、党中央軍事委員会主席
李克強:国務院総理、団派本流(「共青団=中国共産主義青年団」中央書記処書記就任経験者)
張徳江:全国人民代表大会(全人代)常務委員長(前重慶市党書記) 
兪正声:中国人民政治協商会議(政協会議)全国委員会主席
劉雲山:党中央書記処常務書記、党中央精神文明建設指導委員会主任、党中央党校校長
王岐山:党中央紀律検査委員会書記、「胡錦濤思想」信奉者 
張高麗:国務院常務副総理(前天津市党書記)

全人代委員長や政協会議主席の地位は名誉職の意味合いもあり、習近平氏の役職を除けば、大事なのは国務院総理、党中央書記処常務書記、党中央精神文明建設指導委員会、そして党中央紀律検査委員会です。

この内、胡錦濤派は国務院(李克強)と紀律検査委員会を掌握し、習近平氏とその側近たる劉雲山(党中央書記処常務書記、党中央精神文明建設指導委員会主任)と対峙している構図です。

習国家主席が続投すると仮定したうえで話を進めると、国務院総理は引き続き胡錦濤派が掌握することになります。

次に1950年以降に生まれた政治局員を、これも序列に従って表記しますと、

王滬寧:党中央政策研究所主任
劉奇葆:団派本流、党中央宣伝部長、中央書記処書記
孫政才:太子党(本流)、重慶市党書記
李源潮:団派本流、国家副主席
汪洋:団派本流(汪道涵海峡両岸関係協会会長を叔父に持つ異色の存在)、国務院副総理
張春賢:軍人系「胡錦濤思想」信奉者、新疆ウイグル自治区党委員会書記
趙楽際:党中央組織部部長、中央書記処書記、
胡春華:団派本流、広東省党書記
韓正:団派傍流、上海市党書記

李源潮は50年11月生まれ、張春賢も新疆ウイグルで味噌をつけていますので除外しますと、王滬寧、劉奇葆、孫政才、汪洋、趙楽際が該当します。

でも教科書通りに行かないのが中国の政治です。

(続く)



# by 4kokintou | 2016-03-22 21:24

瀬踏み

北朝鮮が盛んに短距離ミサイルを日本海へ向けて発射していますが、どうして長距離ミサイルは南で、短距離は東と決まっているのでしょうか。

先代(金正日「永遠の総書記」)の時代、日本の領土(勿論、領海と領空等を含む)を横切る形で長距離ミサイルを飛ばした経緯があります。

1998年の話ですから、米国はクリントン、中国が江沢民の時代、両者とも隠れも無き「反日」、そして金正日氏は筋金入りの「親江沢民反胡錦濤」、ですから中国の後押しと米国の暗黙の了解の下に実行されたと推測されます。

ロシアと北接、中国とは西隣する北朝鮮にしてみれば、この方角にミサイルを打ち出すのは御法度以前の問題、付け入る隙を与えない意味からも論外です。

ですから南方と東方に限られますが、日本の領土を横断するコースは、やはり日本の反発が強過ぎて無謀、対北朝鮮感情が著しく悪化してだけでも、国益の観点から言えば割が合いません。

ですが遥か手前(今回の飛行距離200キロ)でしたら差し支えありませんし、間違って南に打ち込んだら南朝鮮(韓国)を直撃することになります。

従って短距離は東、でもソウルも射程距離内ですから、韓国の危機感を煽るには持って来い、同国の総選挙で与党が勝利するべく駄目を押す感じですが、下手(?)をすれば参議院選挙まで暴れるかも知れません。

長距離の場合は、南西諸島の一部を掠めたかも知れませんが、本土横断よりは衝撃が小さく、中国全土はおろか米国まで射程内に収めているのですから大したもの、但し本気で狙いを定めているのは中国です。


その中国ですが、どうも習近平国家主席の立場が危うくなっている印象を受けます。

新華社通信が「最後の指導者」と紹介した件はご存知の向きも多いと思われますが(そもそも「最高の指導者」と言う表現自体、あまり使われないらしい)、習主席を立場を異にする李克強首相が、全人代の活動報告演説で「習近平総書記」云々と言うべきところを「鄧小平」と言い間違えました。

更に習近平辞任を求める声が上がっていることも異例、新華社の誤記にしても、李首相の過ちにしても確信犯、盟友オバマが退任すれば習国家主席の後ろ盾は無くなるとの読みがそうさせていますし、国家主席もそれを覆す力量がありません。

一方で台湾次期総統は次の「駐日大使」に首相経験者を登用、本気で「日台同盟」を結ぶ意欲有りとみました。


己の名前を歴史に刻むことに夢中なオバマ大統領は、キューバでのんびり物見遊山を決め込んでいますが、「盟友」習近平氏とは3月末乃至4月上旬に会談予定、最近、オバマ氏が習主席につれないのは、利用価値がなくなったためであり、習近平を切ることでキューバ訪問と取引したためと考えられます。

(続く)


# by 4kokintou | 2016-03-21 23:12

歴史から学ばない大英帝国

アルゼンチンの領海で違法操業していた中国船籍を、沿岸警察が発砲して撃沈(漁師は救助)、これに対し中国側は不快感を表明していますが、地球の反対側まで行って漁場を荒らす中国人の度胸と言うか傍若無人ぶりには、感心するやら唖然とするやら。

中国政府も負けず劣らず、アルゼンチンに懸念の意を表明していますから、面の皮の厚さでは官民一体です。


ミャンマーで両勢力がせめぎ合っています。

表向きは、民主化勢力と軍部と言う構図になっていますが、実態は「親英派」対「反英派」の権力闘争です。


今回の選挙で政権の座を獲得した与党は、スーチー女史を領袖として戴いていますが、そのご主人は英国人(ですので同国の憲法上、大統領に就任出来ない)、代わりに大統領に就任した人物は、英国に留学して大学生活を送り、帰国して女史の車の運転手を務めていたと言いますから、この両人は完全に英国の傀儡です。

要人の運転手と言うのは、往々にして黒幕や連絡係である場合が珍しくありません。

ミャンマーの政情を占ううえで欠かせない要因が、「英国」、「中国」、「軍部」、「仏教勢力」、最後に「一般国民」です。

ミャンマーの窓口を務めていたのが他ならぬ習近平氏(当時国家副主席)ですが、当時のミャンマー軍事政権内部で権力構造に変化があり、親中派(=習近平派)が一掃された経緯があります。

従って、軍部、仏教勢力、一般国民は反英反習近平派(と言うより「親日派」)ですが、永らく植民地であった経緯から、この国の上層階級は「親英派」、経済は「華僑及び親中派」が抑えている現状があります。

今回の総選挙(での勝利)は、英国と習近平派が政権を転覆すべく実施した工作の一環と思われますが、やはり軍部の支持が無いと政権は安定しません。


昨年(2015年)7月、李克強国務院総理が日本の外務省局長と会談して以降、日本と中国(この場合は反習近平派)、北朝鮮それにロシアを巻き込んだ外交戦が活発化していますが、気に食わないのがオバマ大統領、安倍総理の訪露に関して不快感を直接伝えたそうで、ですが大統領のことを歯牙にもかけない総理は、逆に対露外交を加速させています。

国際社会は、オバマ大統領とその「盟友」習近平国家主席の非力を見切っています。

習主席が人民解放軍の再編成に言及していますが、それがはたして意に沿ったものであるかどうかは不明ですが、中国人に限らず(例えば日本の民主党)実行する意志がない事柄については、期日を設けません。

要は「締め切りの無い宿題」、むしろ「宿題は先送りする」のが特徴、何時まで経っても実現しないとみて差し支えありません。

(続く)
  


# by 4kokintou | 2016-03-18 20:24