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現代中国考


現代中国に独自の観点から考察を加えます
by 4kokintou

緊張を孕む中朝国境

本題の前に、中国湖南省で発生した列車事故について一言。

事故に巻き込まれた列車に江沢民夫妻が乗車していたのは事実か、その安否は如何と言った部分も重要ですが、最も肝心な点は上海閥の領袖にして元国家元首で、最近は老いが目立つ高齢の江沢民氏が、上海を離れしかも陸路で地方に赴いたとの「未確認情報」が流れたことにあります。

真実が奈辺にあるのか、仮に事実であればそれだけでも大事件ですが、誤報だとしても、「前国家主席」が、「高齢で最近は心身ともに衰えが目立つ」にもかかわらず、「飛行機を使わず列車による長時間の長旅」を強行したと、国民に知らせる(或いは信じさせること)効果があります。

従って情報の真偽はともかく、耳にした中国国民は、江沢民自らが地方に足を運び、現地を梃入れしなければならないほど、江沢民一派は追い込まれている、こう解釈しますし、それが現実なのは国民も分かっています。

ですから実際に列車事故に巻き込まれ、死亡や重体、重傷を負った場合は勿論、無事であったとしても地方行脚をしていたのならば、それだけ派閥の力が衰えていることを示していますし、全くの虚報だとしても、その種の嘘を流されるだけで痛手なのです。

真相は明らかになるかも知れませんし、このまま藪の中かも知れません。

ただ上海一派の没落は避け様の無い事実であることが、今回の件で周知されることになりました。


その江沢民氏や習近平氏(国家副主席)が、北朝鮮の後継者と面会したと言う情報が出てきていますが、この情報は習近平副主席が「太子党(中国版二世議員、世襲特権階級)であると共に、江沢民一派に極めて近いか、属していることを物語ってくれています。

要は中央を胡政権に握られているから、反主流派で将軍様とも仲の良い上海閥(+反胡国家主席勢力)のお墨付きだけでも得ようという、北朝鮮側の窮余の策です、訪中が事実だとしても。

おそらく訪中団は北京には入っていない筈で(そもそも認めてくれないですから)、上海側が手配した航空機で空路直接上海入りし、帰途も上海空港を使っている筈です。

ですが圧倒的な自力をつけつつある北京に対し、頽勢の一途を辿る上海一派と、危うい権力の禅譲を強いられている平壌があらためて手を結んでも、効果があるかと言えば疑問符を付けざるを得ません。

息子(今の時点は三男)に最高権力者の地位を譲りたい金正日総書記が、世界、実は北京の現政権に対して強硬策を採るのはこうした背景がある訳でして、権力の世襲を認める気が更々無い胡政権は、当然のことながら軍事的圧力を加えていますし、経済的補給路の締め付け、北朝鮮国内での諜報工作を活発化させているのは、考えなくとも疑いのない事実です。


そして軍事的小競り合いが起きれば、これぞ胡指導部の思う壺、上海株式市場は混乱しますし、「同盟国の保護」を名目に子飼いの人民軍を進駐させることも可能になります。

今年の夏の国際政治の主役、それは北京です。

(続く)

by 4kokintou | 2009-06-29 23:57
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