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現代中国考


現代中国に独自の観点から考察を加えます
by 4kokintou

軍閥の「意義」 ~蒋介石理解の補助線~

毛沢東や蒋介石から主義主張や政治的信条を剥ぎ取ってしまえば、単なる軍閥に堕してしまうと言うのが本誌の当初の持論でしたが、それ以外に中国共産党と国民党は「文官=官僚」を有していた点が、従来の軍閥と異なる点だと思われます。

蒋介石の場合はそれに加えて「近代化」も手に入れていましたが、軍隊を運用するには文官の存在が不可欠なのは歴史が証明するところで、背後に官僚の存在しない軍隊は愚連隊と異なりません。


「革命の父」孫文が辛亥革命を通して清朝(=大清)を倒したのは孫文の勝手ですが、清朝歴代皇帝が束ねていた権力と持ち合わせていた権威、そして「文治主義=科挙」の精神の受け皿を用意しなかった点で、これは断じて革命ではなく、「辛亥動乱」と呼ぶべき性質のものです。

殊に文治主義の精神を継承しなかったがために武断主義が台頭し、清朝の後を襲うべく各地の軍閥が名乗りを挙げた点は、近現代中国にとって最悪の展開でした。


軍閥支配下では被支配民に対する収奪が再生産不可能な水準、要は食って行けない段階に達していたと思われ、とすると支配される側は娘を身売りしますが、野郎はと言えば裏社会に身を投じるか、他ならぬ軍閥に入隊します、農業や商工業で食えないとなると、残る産業はそれらしかないですから。

ですから軍閥は「食っていくためには相手を滅ぼす」意識が非常に強く、兎に角、相手構わず喧嘩を仕掛けますが、その軍資金は収奪によって賄われます。

そんな状況ですから文官を雇って官僚群を形成する余裕はありませんし、本来ならば文官を輩出すべき宗族階級や胥吏階層からみても、必要とされないのに命を張る理由はありません。

しかも結果的に「中央集権」も否定することになりますから、群雄割拠は「武断主義的地方分権の極致」と言えます。

これではいけない、知識人でなくともこう考えるのは当然ですが、此処で中国人が誤ったのは、何で「革命以前」より「革命以降」の方が不幸で退化しているのかを掘り下げなかった点で、残る国民党と共産党も孫文が「革命の父」である点では異論がなかった、「君主制はもう懲り懲り」と言うのが当時の世論の総意だとしても、「孫文は間違っている」と言う政治勢力が存在しなかったことが致命的でした。

(続く)

by 4kokintou | 2011-01-29 01:07
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