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現代中国考


現代中国に独自の観点から考察を加えます
by 4kokintou

ビルマ・ルートの正体

日中戦争(日華事変、又は日支事変)で蒋介石率いる国民党政権が重慶で逼塞していた頃、唯一の支援経路はビルマ・ルート(援蒋ルート)であると言われていました。

事実、相応の効果があったからこそ日本陸軍は一気にビルマまで占領し、支援網を断ち切りつつ絨毯爆撃で重慶政権を締め上げる算段でしたが、蒋介石は子飼い部隊のみの安全と食糧を確保することで、換言すれば現地人から食糧を奪い、空襲にさらすことで日本側の意図を挫きました。

まさに「小中華主義=身内主義」の面目躍如たるものがあり、仮に蒋介石によって中国統一が成されていたら、蒋介石本人が認める人間集団が「人=特権階級及び一級国民」とその他の「民=二級国民」に分類されていたと思われ、その小型版が転進後の台湾です。

ここで大事なのは、蒋介石なりの「四民平等」に対する解釈があり、「身内」の中には従来の客家階級も居れば黒社会出身者も存在出来ますし、宗族階級や胥吏階層、或いは軍閥出身者も参加を許されたでしょうが、それらはいずれも「蒋介石とその周辺の目が届く範囲」に限られ、必然的に「南風が北風を圧倒する」政権になります。

もう一つの特徴は、当時において数少ない親米反英政権であったこと、北伐を開始するにあたって満州帝国を実質的に承認することで当時の日本政府と手打ちしたのも、「小中華主義」の観点から絶対不可欠な「中国中枢部の統一」、それに伴う「租界、租借地の回収=国家主権回復」のためであって、最大租界はある意味満州帝国ですが、流石に「超大国の雛」であった大日本帝国と事を構える愚は避けるべきで、その点では賢明でしたが、結果的に中国側から沿岸部を「門戸開放」してくれた訳で、この時点で中国の政情に容喙出来るのは日米英のみ、領土の一部を占拠している日本に門戸開放する訳が無く、利権の奪回対象であった大英帝国にも呼びかける筈がなく、この瞬間だけ米国の独占状態になったのですが、やがて日本陸軍が蹴散らします。

皮肉なことに、大英帝国の利権を回収したのが蒋介石、その蒋介石率いる国民党が引き入れたのが米国、米国が漸く築いた対中利権の足掛かりを台無しにしたのが他ならぬ我等が帝国陸軍で、これだけでも米国からみれば戦争事由です。

大英帝国も米国の中国進出は避けたいところですから、日本が親米反英の蒋介石政権を蹴散らしてくれたことで内心はほくそ笑んでいたでしょうが、「空気は食えない」から食い物にありつくためには「空気は読まない」日本の態度をみて、まともな感覚の英国要人は頭が痛くなったと思います、「形式だけは租界や租借地を廃止しても良いから、何らかの形で英国の既得権益を残してくれ」と。

その大英帝国ですが、親米反英色の強い重慶政権を「本気で」物心両面で支援したかと言えば疑問符を付けざるを得ません。

(続く)

by 4kokintou | 2011-12-06 23:54
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