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現代中国考


現代中国に独自の観点から考察を加えます
by 4kokintou

幕引き

兪正声政治局常務委員(政協会議全国委員会主席)が、11月に予定されている党大会(三中全会)で、景気過熱への対策は過去に例を見ないものになると明言、大胆な政策変更を仄めかしました。

発言内容は李克強総理の施政方針に沿ったもので、この党内序列第四位の人物が、団派を主力とする胡錦濤「長老」陣営に近い立場にあることをうかがわせるとともに、秋の党大会の主要議題が「バブル経済の処理、影の銀行の処分、理財商品の規制や地方政府事業体への出資抑制」ではないかと思われます。

それにしても七名の政治局常務委員の内、李克強総理、王岐山党中央規律検査委員会書記に続いて兪正声政協会議全国委員会主席が「長老」陣営に加担したか、それに近い状況にあるとすれば、習近平党書記が頼りとせざるを得ないのは残りの三名(張徳江、劉雲山、張高麗)ですが、「長老」とは距離があっても「青二才」総書記に積極的に肩入れする理由もありませんので、何とも御しづらい連中です。

そもそも党大会(三中全会)は日程すら決まっていませんので、常務委員の七名を筆頭に水面下で暗闘真っ盛りではないかと推測されます、時間と体力と人材の無駄遣いだとは思いますが。


中国海軍が誇る北海、東海、南海艦隊が西太平洋に集結、建軍以来初めての三艦隊合同演習を実施しましたが、合同演習にまでこぎ着けられたことを慶事とすべきか、これまで何やってたんだと呆れるべきかの判断は各位にお任せするものの、それぞれの艦隊に連帯意識が無いのは間違いなく、紙切れ一枚で連合艦隊を結成したり、人事異動で別の艦隊に移るのは当たり前の日本からみると、つくづく「前近代」は非効率と言う印象を持たざるを得ません。

拳を振り上げたと言うことは、拳の降ろしどころも決まっている場合が多く、先日北京で開催された「北京・東京フォーラム(日中有識者フォーラム)」では、やっぱりと言うか基調講演は福田康夫元総理、中国人は律儀だなと感心しつつ、唐家璇元国務委員の挑発的発言もありましたが、これが反対派の精一杯の意思表示でしょう、と言いますか、日中戦略的互恵関係を構築した日本側の立役者が基調講演する場にしか、「対日強硬派」を称する連中は発言の場を見出せない様子です。

そのフォーラムの提言「北京コンセンサス」には「不戦の誓い」が盛り込まれ、両国有識者の共通認識として、「両国は戦争に道を開くどんな行動も選んではならない」と明記、これに上述の三艦隊合同演習(と言う名の「ガス抜き」、唯一従わない東海艦隊を統制下に置くこと)、それに習国家主席の最近の弱腰発言を踏まえると、「近い内に中国は尖閣問題から手を引く」と推測されます。


話変わって、ややこしいのが対印外交で、先日インドのシン首相が訪中しましたが、首相と会談した中国側要人は確認出来ているだけでも、習近平国家主席、李克強総理、張徳江全人代常務委員長と、これだけでも豪華な顔ぶれで、同時期に訪中したメドヴェージェフ首相なんて脇に追いやられた感がありますが、それだけに留まらず最後を飾ったのが温家宝「長老」(前総理)でした。

中国は国別に要人を「窓口」とする習慣がありますが、インドについては複数の人物が競っている感があります、前執行部では呉邦国氏(前全人代委員長)だった印象がありますが。

一方のメドヴェージェフ露首相は、李克強総理の故郷安徽省までついて行き、おそらく攻勢を強めるプーチン大統領への取り成しを頼んだものと思われますが、それは無駄な足掻きというものです。

外国首脳を地方に連れ回す時、中国はその人物に対し極めて冷淡であることを意味しますから、メドヴェージェフ首相の願いは叶えられません。


日経を読んでいてそうだろうなあと思ったのは、朴槿恵韓国大統領が重職に陸軍士官学校出身者か検察関係者を登用していることで、しかも年齢は60代後半以上(大統領は61歳)ですから、父親(朴正煕元大統領、故人)の政治理念を肌で知る人物で固めるとの批判が出ているそうですが、そうするしかないと思われます。

両親を暗殺(銃殺)された体験を持ち、本人が「地獄を味わった」と語るほど無数の裏切りを経験し、尚且つ自らが挫折を繰り返しながらも最高権力者の椅子に座ると言うのは、余程の覚悟と信念が無ければやり通せません。

亡父が部下に射殺されているのですから、自分の手足となるべき人材は慎重に選別していると考えるべきで、大統領選挙に当選して以降の財閥との軋轢、特に財閥側がめぼしい人物を片っ端から調べ上げて告発し、閣僚就任辞退に追い込んだ事実と、その後の中堅財閥領袖の逮捕劇を見るにつけ、亡父朴正煕大統領(当時)暗殺に巨大財閥が一枚噛んでいたとの疑惑が拭えません。

陸軍士官学校には亡父に忠誠を尽くす人材が残り、検察は時間をかけて自派の勢力を植え込んで行ったものと推測されます。

結局、大統領一派と財閥(及び官僚組織)は不俱戴天の仇なのですが、その原因は日本、ここにも「近世」と「近代」の激突があります。

(続く)

by 4kokintou | 2013-10-28 21:25
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