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現代中国考


現代中国に独自の観点から考察を加えます
by 4kokintou

PM2.5 ~中国の新兵器?~

日経新聞によると、中国国防大学教授を兼ねる海軍少将が国営中央テレビで、PM2.5について、それを含む濃霧は米軍のレーザー兵器を防ぐための「最もよい防御法だ」と語ったそうな。

小誌が米軍関係者なら、中国沿岸主要都市に艦船を派遣し、攻撃態勢のままそこに停船させます。

米国艦船を攻撃したら、中国は国家存亡の淵に立たされるほどの「お礼参り」を喰らうことになりますから、中国側から先に手は出せず、とすると件の教授の説に従えば、各都市は年中、PM2.5の濃霧に包まれていれば安心、但し住民の多くが患うか、その都市から逃げるでしょうから、経済活動が麻痺して別の意味で国家存亡の淵に立つことになります。

国営中央テレビ(に限らず媒体は全て)は党中央精神文明建設指導委員会とその傘下の党中央宣伝部の指導下にあり、従って今や数少ない「反胡錦濤陣営」の砦、躍起になって公害企業の活動抑制を試みている李克強国務院総理に対する、反対勢力の牽制とみるのが妥当と思われます。

それにしても軍高官がこんな珍説を臆面もなく開陳するとは、ですが何よりも恥ずべきは、今回の件の将校の発言で、中国に「近代的合理的思考」が定着してしない事実が露見してしまったことにあります。

過ぐる太平洋戦争末期、日本では敗色が濃くなると共に精神論一色になりましたが、それは「官民を問わず、性別すら問わず(でないと学徒動員は不可能)、近代的合理的思考が定着していた」から、つまり真っ当な考え方をすれば、軍部では上は元帥から二等兵まで、民間でも内閣総理大臣から庶民に至るまで、同じ結論が出るのは火を見るよりも明らかだったからです。

これに対し、教授を名乗る中国海軍将校の発言が致命的なのは、私利私欲或いは頼まれて心にもないことを平気で言うその心理構造もさることながら、発言の中身が合理的でも近代的でもなく、不純な動機にはこの際、目を瞑るとしても、内容が専門家のものと言えない、裏を返せば「検証」と言う作業を中国国民は身に付けていないことが、今回の一件で歴然となってしまいました。

3年前の3月11日以降の東京電力の隠蔽体質には嫌気が差しますが、、それでも科学的に辻褄が合う様に努力している姿は、文系で素人の小誌にも分かります。

少し話がそれますが、近代の特徴の一つに「文系の理系に対する寛容」が挙げられると思われます。

文系の極致が政治と宗教ならば、その対極にあるのが自然科学、そして「辻褄の合わないものを纏める」のが社会科学(つまり政治と宗教)の役割なのに対し、「辻褄が合わないこと」を自然科学は絶対に認めません。

自然科学の進歩が社会の発展に貢献するのは事実ですが、それをやられると政治と宗教の権威が失墜する、政治も宗教も社会秩序を維持するために不可欠の装置ですから、それに傷がつくことは許されません。

ですから「前近代的」文系はあの手この手で理系の頭を抑えにかかりますが、中国の場合、それが「科学的社会主義」と「一党独裁(民主集中制)」です。(従って特に共産主義は近代国家には根付かないことになり、この説に従えば旧ソ連も近代国家の範疇に入らなくなります)

翻って我が国はどうか、天皇制と最先端科学(殊に分子生物学)が共存する奇妙な国家で、如何に自然科学で業績を残しても「それと天皇制とは別」と言う精神構造(心理的安定)を持つ国民です。

昭和天皇がその晩年に重篤になられた際、多くの国民が天皇の平癒を祈念するため多くの国民が自発的に役所に参集し、地方公共団体も当たり前の様に記帳所を設置、それは崩御なさるまで途絶えることはありませんでした。

記帳した国民の多くは、戦前の経済的苦境も、未曽有の厄災と言って良い太平洋戦争も、そして戦後の全てを知ったうえで、そうすべきと判断したのであって、その中に科学者や製造業従事者と言った「広義の理系」が多数存在していても決して不思議ではありません。

「寛容な文系が構築した、理系と文系の程良い均衡」、その根底には天皇制があるのですが、これが日本の真の強みと言っても、中韓には分かりますまい。

(続く)

by 4kokintou | 2014-02-24 01:02
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