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現代中国考


現代中国に独自の観点から考察を加えます
by 4kokintou

ミャンマーをもう少し

いずれも北京週報からの引用ですが、今回のヒラリー国務長官ミャンマー訪問関連の記事の見出しだけ(それで充分だと思われます)を紹介しますと、「中国はミャンマーと西側諸国の接触強化を歓迎」、「ミャンマーで外交的賭けに出る米国」と、まるで他人事の様に報じています。

ミャンマーを自らの陣営に寝返らせておきながら、窓口は習近平国家副主席のまま、習さんからすれば立場がありませんし、胡錦濤国家主席とその周辺には、陰湿ですが切れ者が揃っている印象を受けます。

内政においては、陸軍を含めた習副主席の政治基盤を丹念に掘り崩し、外交では窓口役として大恥をかかせる、根気が要りますし緊張の糸を切らす訳には行きませんが、この種の権謀術数は中国人の最も得意とするところかも知れません。

例の嫁さんの彭麗媛陸軍少将が中国文学芸術界連合会の副主席に就任したり、記憶違いで無ければユネスコか何かの親善大使にも任命されていますが、これは習国家副首席を初めとする反胡錦濤勢力の焦りの表れと理解すべきではないでしょうか。


むしろヒラリー長官がミャンマーに赴き、権力側と在野の両方の首脳と面談した事実が大きいと思われます。

オバマ大統領が「ごーるどまん・さっくす」と袂を分った今、同社の最有力代弁者の一人が、政略結婚で娘を差し出してまでGS側と姻戚関係を結んだ国務長官ですから、ミャンマーの件と言うのは「胡錦濤政権とGSの握手」であり、裏を返せば「習近平氏や江沢民氏を含む反対勢力をGSが見限った」と断定しても宜しいのではないかと言うのが小誌見解です。

ですから反中央勢力の有力な一角である上海閥の「金のなる木」上海証券取引所は、世界が一時的にせよ同時株高で沸く中、むしろ下落傾向にあり、2,300ポイント割れが視野に入りつつあります。

江沢民一派は見捨てられたと仮定すると、最近の指数の推移は説明がつきますし、それと軌を一にするかの如く、「環渤海経済圏」が注目を浴びているのは、小誌が以前に勝手に命名していました「渤海総合(先物)市場構想」が現実味を帯びつつあるのではないかと推測する次第です。


もう一つ、今回のミャンマー騒動から得られた収穫は、折に触れて読者各位からご指摘を受けていた点、すなわち、米英の「微妙な」関係が小誌にとって腑に落ちつつある事実です。

まずミャンマーの政情ですが、従来の権力側と反政府勢力の対決は、振付師英国による自作自演の茶番劇ではなかったのではないかと言う疑問が湧きつつあります。

反政府勢力の象徴スー・チー女史の夫は英国人、同様の例を現代史に求めると、PLOの故アラファト議長の奥さんがフランス人、少なくともフランスの政治勢力の一部がイスラエルに冷淡だったのは、核兵器を含む様々な軍事技術をアラブ各国に提供していた事実からもうかがえます。(同時にイスラエルにも兵器を売却しているのですから、仏外交とは何ぞやと問いたくなります)

在野勢力に英国の影響力が想定される一方、ミャンマーの権力側の歴代の後ろ盾が誰だったかが問題になりますが、まず理解すべきは、対戦中のビルマルート(援蒋ルート)から分る様に、ミャンマーの最大の存在意義は「中国と英国の裏街道の連絡経路」だった点にあります。

ですから英国は同国の権力者にも影響力を行使出来る立場にあり、しかも戦後一貫して上海と香港を死守、この両都市がかつての大英帝国による中国侵略の前線拠点であり、その際にその走狗となったのが上海から揚子江(長江でしたっけ)沿いの、日本語で言うところの「反社会勢力」、或いは「黒社会」、「闇勢力」、突き詰めれば「幇」と言うことになるのでしょうか。

いずれにせよ中国側の窓口が、英国の出先の意を受けた、絶対に旧宗族階級とは縁の無い人間集団だとすれば、今回のミャンマーの一件は中国にとっても米英関係にとっても「革命」に値する画期的出来事だったのではないかと思われます。

(続く)

by 4kokintou | 2011-12-06 00:00
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