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現代中国考


現代中国に独自の観点から考察を加えます
by 4kokintou

勝負あり? 或いは深慮遠謀?

「習近平総書記就任決定」の新聞辞令が頻々と出ていまして、噴飯物は産経新聞の「胡錦濤氏、完全引退」、それならあの江沢民氏も「完全引退」しているのかと言いたいです。

解せないのは、避暑地北戴河での会議が終わった直後にはあまり動きがみられず、先月(8月)28日の米国務省のヒラリー国務長官の外遊日程発表(因みに同月30日の出発)の前後から、報道機関の動きが慌しくなった点で、ヒラリー長官は9月3日と4日の2日間に亘って北京に滞在しますので、その期間中に誰と面談して何を話すかが分からないと、次期政権に就いていずれに軍配を挙げるべきか、率直に言って判断しかねる心境にあります。


習近平氏は中国の最高指導者にならない方が身の為だと思われます、それだけの力量に欠けていますから。


現段階で直面しつつある課題として、素材産業を含めた製造業全般が抱える、青天井としか言い様の無い余剰生産能力があります。

現政権は融資(貸し出し)と需要(公共事業削減)の両面から締め上げていますが、余剰生産能力を抱える業界に属する企業の殆どが地方政府傘下の「国有企業」、つまり習近平氏に代表される太子党(=革命宗族)と、江沢民氏を筆頭とする上海閥(=裏社会系成金宗族)の「米櫃」です。

「業界再編成」の掛け声の下、水膨れした今の経済の贅肉を削ぎ落とし、併せて政敵の「米櫃」に痛撃を与えるのが現政権の魂胆と思われますが、習氏では「お友達」や「知り合い」の居る企業を斬ることは叶いません。

とすると金融政策の蛇口を緩めることになりますが、それは世界の需給の現状を無視した暴挙で、中国企業が再び増産に転じれば、それは「デフレの輸出」と非難されるのは確実ですし、その様な無茶苦茶な経済運営を観れば外資が逃げ出すのは火を見るよりも明らかで、上海市場は閑古鳥すら近寄らなくなる惨状に至ります。

加えて待ったなしの問題が、「穴だらけの年金基金の埋め合わせ」と「特大の評価損を抱えた地方政府系投資基金の整理」、これも税金投入で凌ぐのであれば、人民元は暴落し、最終的にはスタグフレーションをもたらすことになります。


東京電力も太子党も一緒で、「皆からおだてられながら、楽して一生暮らすことが保障されている俺達は、特別な存在なんだ」と驕り昂ぶった瞬間から、人間の脳味噌は退化を始めます。

東電なんて超エリート集団ですが、長年に亘って脳味噌を使わないと、有事の際に何の役にも立ちません。

甘やかされて育った太子党も有事に対処する能力は皆無、しかも団派(旧宗族階級)と国務院(旧胥吏集団)がそっぽを向けば統治能力はゼロ、しかも待ち受けているのは共産主義中国崩壊の可能性も孕んだ「有事」です。


ヒラリー長官が「引導を渡す」のか、駄々をこねる太子党の言い分をとりあえずは聞いて、あらためて超大国に刃向かうことの意味を実感させるのか、これだけは分かりませんが、外資系企業に対し党分科会を設けろと言う考え、換言すれば自派の人物を党書記として雇えと外資にまで迫るのは、賢いやり方と言えませんし、その程度の発想しかないのであれば、一国の最高指導者にならない方が幸せです。

(続く)

by 4kokintou | 2012-09-03 09:45
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